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音楽多め

【REVIEW】Yellow Days『A Day in a Yellow Beat』(2020)

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UK南イングランド出身のシンガー・ソング・ライターの2ndアルバム。

ThundercatやMac DeMarcoに影響を受けたというバリバリ新世代なんですが、この作品の音自体はとてもヴィンテージ・ソウルな感覚が随所に溢れています。レイ・チャールズがメチャメチャ好きらしくて納得な感じですね。

23曲入とけっこうアルバムのボリュームがあるんですが細かくインタールード的な楽曲が入っていて非常に聴きやすいです。Mac DeMarcoやラッパーのBishop Nehru(最高!)、あとはジャズトランペッターのNick Waltersなど非常にハイセンスな人選の方々がゲスト参加していました。

Pitchforkではかなり辛辣に書かれていましたけど自分は好きですよこのアルバム。

Yellow Days - The Curse (Official Video) ft. Mac Demarco

Yellow Days - You (Official Video)

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Yellow Days (@yellowdays) | Twitter

【REVIEW】SWANS 『To Be Kind』(2014)

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好きなんですよね、SWANS。スタジオアルバムは全部持っているぐらい。昔の作品も大好きですし、この先の作品も未来永劫好きなんだと思います。

2010年に『My Father Will Guide Me up a Rope to the Sky』で14年ぶりに復活してからというものSWANSはリーダーMichael Giraのレーベル<YOUNG GOD>でそれまでにリリースしていたフリー・フォーク〜ニュー・ウィアード・アメリカな音楽を取り込み、その集大成として傑作『The Seer』を2012年に完成させました。

ある意味頂点に君臨してしまったように見えたSWANSですが続く本作ではここまでの路線にプラスして、かつて「インダストリアルの帝王」と呼ばれていた時代のような凶暴な音をグルーヴとして宿すことに成功しております。反復されていく強烈なリフがだんだんと脳髄まで侵食してきてある種の陶酔感を覚えます。

インタビューでも語っていたゴスペルからの影響か、救いを求めるようなスピリチュアルなMichael Giraの歌声/叫びに心を鷲掴みにされるバンド史上最高傑作です。

 SWANS "TO BE KIND" DVD TRAILER

YOUNG GOD RECORDS

【REVIEW】login『Bitzer』(2020)

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非常にインターネット的な話をすれば今年の5月ぐらいにTwitterで参考にしている方々が次々と話題にしていたので聴いてみたというだけで、全く知らない&今でも誰だかいまいちわからない謎のアーティストです。brakenceの『punk2』(こちらも名盤)という作品に客演参加していたので彼から辿ってようやくSNSを発見しました。どうやらカリフォルニアのアーティストみたいですね。

一曲一曲の情報量が過多で、Frank Ocean以降とも言えるチルな雰囲気をリヴァーブたっぷりに醸し出したかと思えば、突然100gecみたいに爆発する、幹の部分は恐らくHIP HOPだと思うんですがなんだか玩具箱をひっくり返したみたいなサウンドになっています。

アシッドフォークっぽい入りから突如チャンネルが切り替わったみたいにエレクトロ・ポストパンクみたいになって最後はビッグ・ビートに流れる「short」という曲が個人的には一番気に入ってます。

short

あの一瞬のTLの盛り上がり以降、日本で追ってる人とかいるんでしょうか?自分は好きなんですけどね。詳しい人いたら教えて欲しいです…。

 

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【REVIEW】タージ・マハル旅行団『JULY 15, 1972』(1972)

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タージマハル旅行団は1969年にリーダーの小杉武を中心に結成された前衛的音楽集団で、今でも世界中の熱心な音楽ファンから愛されている存在です。もちろん後追いですが自分ももれなく好きなんですよねこのアルバム。

72年に発表された本作はパリで行われた現代美術展を皮切りにワゴン車に乗って各地で演奏をしながら最終的にインドのタージ・マハルに至るまでの約11カ月間にも及ぶ世界放浪の旅を終えた帰国記念公演として、東京の草月会館ホールで行われたライブを録音したものです。

(こちらの映像はその11カ月間の旅を記録した貴重なドキュメンタリー映像です。)

Taj Mahal Travellers On Tour 1972

 

自由気ままに飛び交う各楽器の音の数々をエコー・マシンを使って細かく音響処理していく、今で言うリアルタイムのダブ処理ですよねこれって。エレクトロニックス・エンジニアの林勤嗣がメンバーとしてクレジットされていたことも大きな意味があったんだと思います。たった3トラックに収められた膨大な情報量にいつ聴いても興奮と感動を覚えます。

余談ですがこの作品のライナーノーツに「タージ・マハル旅行団」と言う名前にはあまり意味がなく「熱海トラヴェラーズ」とか「熱海観光団」という候補もあったと書いてあって、いや普通にそうならなくて良かったなと思いますよね。

【REVIEW】John Wizards『John Wizards』(2013)

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バンドとしては数枚のシングルとこの1stアルバムだけを残して消えてしまった南アフリカケープタウン出身の7人編成バンドJohn Wizards。

2010年代初頭にHonest Jon'sが再発して世界で話題となった南アフリカの高速ダンスミュージックShangaan Electroをインディーロックに組み込んだ唯一無二のサウンド「Limpop」は当時とにかく衝撃的で一部でけっこう盛り上がった気がします。

John Wizards - "Limpop"

その他の曲もサウスアフリカン・ハウスやアフロ・ポップにチルウェイヴやインディーロックを取り込んだ素晴らしい楽曲ばかりで、ダンスミュージックあり、アンビエントあり、ソウルあり、ロックありの今聴いても本当に新鮮なアルバムだなって思います。ライブ映像もメチャかっこいいんですよね。

John Wizards 'Ama' - Boiler Room LIVE Show

John Wizards - Lusaka By Night (Live)

元々、中心人物のJohn Withersから名前が取られているので現在は恐らく彼のソロ名義として活動してるみたいです。Zero 7のREMIXや、以前最新作を紹介したCLAP! CLAP!の2ndアルバムにも客演参加、最近だとKaitlyn Aurelia SmithのREMIXもやってました。

もちろんその辺も良いんですが個人的にはまたバンドとして復活して欲しいんですよね…。

【REVIEW】冥丁『古風』(2020)

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広島を拠点に活動するエクスペリメンタル/エレクトロニカ・アーティスト冥丁の最新作。

1stアルバム『怪談』がPitchforkで騒がれていて2018年の年間ベスト・エクスペリメンタル・アルバムに選ばれた辺りからここ日本でも逆輸入的に知名度を上げていった気がします。『怪談』そして、その後リリースした『小町』に続く「LOST JAPANESE MOOD」シリーズ三部作の最終章ということみたいです。シンガポールのレーベル<KITCHEN. LABEL>からのリリースだからか今回はサブスクも出てますね。

和楽器や民謡、フィールドレコーディング、日本映画のサンプリングなどの音をニューエイジ的な質感で再構築していく流れは相変わらずなのですが、今回は「花魁 I」「花魁 II」というトラックに見られる様にヒップホップ・マナーすら感じさせるビートを導入したことでエクスペリメンタルな方向性に止まることなく更に一歩先に進んだような作品になっています。正直今年を代表する名盤かと。

Meitei / 冥丁 - Oiran II / 花魁 II (Official MV)

https://www.instagram.com/meitei.japan/

冥 丁 MEITEI (@japan_meitei) | Twitter

【REVIEW】Macaroomと知久寿焼『kodomono odoriko』(2020)

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これ言うと年がバレそうですが自分は小学生の時に初めて買ったCDがたまの『さんだる』って作品だったんですよ。なので個人的なルーツミュージックはたまで、今でもたまの諸作はけっこう聴いています。そんな訳で最近リリースされた元たまの知久寿焼と日本のエレクトロニカ楽団Macaroomとのコラボアルバムが素晴らしい内容だったのでご紹介。

自分はMacaroomについて全く知らなかったんですが元々たまの「電車かもしれない」という曲をカバーしていたことから知久との交流がスタートしたみたいです。そこからライブでの共演を経て、このプロジェクトのアルバム発売を目指したクラウドファンディングで224万円の支援を受けて本作が完成したようで、これも正直全然しらなった…。TwitterのTLで最近見かけてこんなの出てたんだ、って感じでやっと気づいたぐらいです。

「電車かもしれない」をはじめとして、「あるぴの」や「いわしのこもりうた」などたま時代からソロまでの知久の名曲をエレクトロニカでリアレンジした楽曲に加え、本作のための新録曲「kodomono odoriko」も収録。知久の歌声って今の音にけっこう合ってるんですよね。どちらにしろ世代の違う若い音楽家と果敢にコラボする彼の柔軟性が素晴らしいです。

macaroomと知久寿焼 - kodomono odoriko (Official Video)

電車かもしれない

エマル (@emaru_macaroom) | Twitter

ちく商会 知久寿焼 (@chikushoukai) | Twitter